戦術指導タイプから戦略指導タイプへ

投稿者: | 2020年5月27日

今回の話は
少し難しいかもしれませんが、
最後まで読めば
すべて理解できるようになっています。

長文ですが、
最後まで読んでから
再読するといいでしょう。

それくらい
健康づくりの支援者にとっては
重要な話です。

それでは、始めましょう。

健康づくりを指導する際に
2つのレベルが存在します。

1つは、
健康になるための
方法やテクニックを教える
戦術レベルの指導です。

そのような健康づくり支援を
「戦術指導タイプ」
と呼ぶことにします。

もう1つは、
健康になるための
シナリオや筋道を教える
戦略レベルの指導です。

そのような健康づくり支援を
「戦略指導タイプ」
と呼ぶことにします。

戦術指導タイプは
短期間で成果を出せますが
その効果は一時的です。

相手が意識や考え方まで
変える必要はありませんが、
統制的な支援になりがちです。

その結果、
支援される側は
自律的になりません。

だから、
健康づくりの長期的な支援において
戦術指導タイプは失敗するのです。

理解しやすいように、
肥満者に対する健康指導を例にして
具体的に考えてみましょう。

肥満者に対する健康指導の目的は
体重を減らすことであり、
やせることですね。

そこで支援者は、
「どうすれば体重を減らせるのか」
と考えます。

食事についてはどうするか
運動についてはどうするか
食事や運動以外に何をするか
などなど

体重を減らす方法を見つけ出して
それを指導しようとするわけです。

このような指導では
なぜ長期的な成果を出すことが
できないのでしょうか?

その理由は、
答えを教えることが
中心になっているからです。

答えさえ教えれば
健康づくりに成功できるかというと、
そういうわけではないのです。

たとえば
定期的に運動すれば健康になれると
誰でも知っています。

間食をやめれば健康になれると
誰でもわかっています。

健康づくりのほとんどは、
知っているけど
出来ないことだからです。

あるいは、
わかっているけど
止められないことだからです。

それなのに、
運動する方法を詳しく指導されても
続くはずがありません。

間食をやめる方法をあれこれ指導されても
実践できるはずがありません。

だから、
戦術レベルの指導では
長期的な支援に失敗するわけです。

たとえ成果が出たとしても
それは一時的なものに
終わってしまうのです。

そこで私は、
戦術を指導することよりもむしろ
戦略を指導することを重視しています。

戦略指導タイプは
成果が出るまで時間がかかりますが
その効果は持続的です。

相手が意識や考え方まで
変える必要がありますが、
統制的な支援にはなりません。

その結果、
支援される側は
自律的になっていきます。

したがって、
健康づくりの長期的な支援において
戦略指導タイプは成功するのです。

先ほどの肥満者の例で
考えてみましょう。

戦略指導タイプでは
どのように指導するのでしょうか?

肥満という問題に対して
答えを直接教えるのではなく、
答えの解き方を教えるのです。

さらに進んで、
問題の見つけ方も教えるのです。

健康上の問題を自ら見つけ出して
その解決方法も自ら考え出せるように
指導するのです。

具体的には、
何が肥満の原因になっているかを
自ら発見できるように指導します。

そうすれば、運動不足や間食が
本当に肥満の原因になっているのかどうか、
自分で判断できるようになります。

その上で、
どうすれば体重を減らせるかを
自ら考え出せるように指導します。

他人から教えられても出来なかったことが
自ら主体的に考え出したことであれば
出来ることが多いのです。

このように戦略レベルで指導すると、
相手は主体的・自律的に
健康づくりに取り組むようになります。

だから、
戦略指導タイプでは
持続的な成果が出るわけです。

ところで、
我が国の健康づくり支援の現状は
どうなっているでしょうか?

戦略指導タイプではなく、
戦術指導タイプの健康づくり支援が
溢れかえっているように見えます。

その理由は3つ考えられます。

第1に、
戦術レベルの指導には
時間がかからないからです。

それに対して
戦略レベルの指導には、
時間がかかるために
多くの人はやりたがらないのです。

第2に、
戦術レベルの指導には
手間がかからないからです。

戦術を修得するだけであれば
クライアントが意識や考え方まで
変える必要はありません。

だから、
戦術指導タイプの支援は
楽なのです。

それに対して
戦略レベルの指導には、
手間がかかります。

戦略を修得するには
クライアントが意識や考え方を
変える必要があります。

そこまで指導するのは
容易ではありません。

第3に、
戦術レベルの指導であれば
商品・サービスと直結できるからです。

提供している商品・サービスが、
もしも減量に役立つものであれば
どうでしょうか。

減量するための戦術を指導しながら
自らの商品・サービスを
上手に紹介することもできます。

一方、戦略レベルの指導では
自らの商品・サービスを紹介することが
却って難しくなります。

なぜなら、
どのような商品・サービスを利用するかも
支援される側が主体的に選択するのが
戦略レベルの指導だからです。

このように
健康づくりを支援する側からすると、
戦術指導タイプのほうが
短期的にはメリットがあるのです。

しかし、
長期的に見ると
まったく違う結果になります。

戦略レベルの指導は
支援される側の自律を促すので
指数関数的に成果が伸びるのです。

そうなってしまえば、
後はそれほど指導しなくても、
自ら学び、成長していくようになります。

支援者の負担は
むしろ軽くなるのです。

いつまでも
手取り足取り指導する必要は
ありません。

それどころか、
健康づくりの先輩として
周りの困っている人を助けることが
できるようになります。

このようにして
健康づくり支援の輪が
どんどん広がっていくのです。

そこまでいくと、
健康づくりの支援者は
本当の意味での指導者になれます。

健康づくり支援のリーダーに
なれるのです。

最後に私の例を
お話したいと思います。

私は6年前から定期的に、
患者を対象にした講習会を
開催してきました。

そこでは、
健康づくりの戦術ではなく
戦略を中心に指導しています。

その結果、
講習会参加者のグループが
自然発生的に生まれました。

そのグループのメンバーは、
主体的に健康づくりに取り組みながら
情報発信もするようになっています。

私は、
その講習会では
漢方薬を勧めません。

漢方薬に頼らずに
自分でできる養生を中心に
健康づくりに取り組むように
指導しています。

しかし、
周りに困っている人がいると
漢方や私のことを宣伝してくれます。

そんなふうにして
私が提供する商品やサービスが
口コミで広がっていくのです。

本当にありがたいことです。

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