2019年10月4日 FB投稿記事

「幸せファーストの医療」の実現に向けて
8月末に、デンマークのロラン島研修ツアーに参加しました。
そこで、一番印象に残ったのは、フォルケスコーレ(公立小中一貫校)の3つの目的・理念です(写真参照)。
第1が「幸せ」
写真中央:trivsel の英訳は wellbeing(幸福)
第2が「学び」
写真左側:læring の英訳は learning(学習)
第3が「国際性」
写真右側:internationalt udsyn の英訳は international view(国際的視野・見識)
デンマークでは学校だけでなく、家庭や社会においても、「幸せファースト」の考え方が徹底しています。
国民一人ひとりが自分自身の幸せ、家族の幸せ、友人の幸せ、国民の幸せ、人類の幸せを第一に考えて、ものごとを選択し、行動している姿をあちこちで見ることができました。
そして、その根底にあるのが「自分自身の幸せ」です。
自分にとって何が幸せなのかを、子供の頃から自分で考え、自分で選択する教育が根付いているのです。
そのうえで、成長するにつれて、家庭→学校→地域→国家→世界に視野を広げて、全体の幸せも同時に考えることができるように教育されているのです。
そんな教育の現場を実際に見聞し、イキイキと生きている子供たちと触れ合うことができて、本当に得難い体験をさせて頂きました。
ツアーから帰国後に知ったのですが、実存主義の創始者と評価されているキルケゴールは、デンマークの哲学者です。
個人の主体性を重視し、各自の幸せに対して自由と責任を持つデンマーク人の国民性が、キルケゴールの思想を生み出したのでしょう。
「世界幸福度ランキング 2019」では、デンマークが156か国中2位であるのに対して、日本は58位です。
この数字を見るまでもなく、私たち日本人の多くが、幸せを実感できずに生きています。
その理由について、考えてみました。
私たち日本人は、聖徳太子の「和をもって貴しとなす」思想をDNAの中に受け継いでいます。
それ自体は素晴らしいことなのですが、「和」という社会的価値観を優先して個人の主体性を確立しづらいという意味においては、マイナスの影響を受けている側面もあります。
また、その反動として、社会的価値観から抜け出し、個人の幸せだけを追い求めるような生き方が日本社会に広がっているようにも感じます。
デンマークの人々は、個人の幸せだけでなく全体の幸せにも視野を広げながら、両者の矛盾や葛藤を弁証法的に統合(アウフヘーベン)することで、本当の幸せを創り出す努力をしているわけです。
私たち日本人は逆に、全体の幸せだけでなく個人の幸せにも自由と責任を持ちながら、両者を統合することで、本当の幸せを創り出す必要がありそうです。
今回のロラン島での体験を活かして、全体と調和した個人の幸せを意識しながら、「幸せファーストの医療」の実現に向けて歩みを進めていきたいと思います。
関連記事:幸せファーストの医療