第60回漢方未病治療センター講習会

投稿者: | 2020年1月7日

アレルギー症状に対する漢方治療の考え方

本日は、私が勤務する辻仲病院柏の葉「漢方内科外来」の患者さんを対象とした講習会がありました。

2014年8月5日に第1回を開始して、今回が60回目。

私が丁度、今年の3月で還暦を迎えることもあって、とても意味のある会になりました。

講習会のテーマは、アレルギー症状に対する漢方治療の考え方。

これから花粉症の季節になるので、時期的にピッタリのテーマでした。

〇〇に効く漢方薬は〇〇です、といった話を私はほとんどしませんが、今回は、次の3種類の処方名をあげながら解説しました。

1.小青竜湯(しょうせいりゅうとう)
2.麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)
3.越婢加朮湯(えっぴかじゅつとう)

これら3処方にはすべて、麻黄(まおう)という生薬が入っています。

麻黄には、強力な抗アレルギー作用があります。
即効性があるうえに、眠くなりません。
むしろ、覚醒作用があります。

また、これら3処方を使い分けるのは比較的簡単です。

水様性で透明の鼻水が出る普通の花粉症であれば、小青竜湯を使います。
漢方医学的には、やや寒証(かんしょう)タイプです。

冷えが強くて、小青竜湯が効かないタイプであれば、麻黄附子細辛湯を使います。
漢方医学的には、極度の寒証タイプです。

鼻水が粘稠で、鼻や目の痒みが強いタイプには、越婢加朮湯を使います。
漢方医学的には熱証(ねっしょう)タイプです。

私が講習会で強調してお伝えしているのは、同じ花粉症であっても、患者さんのタイプが寒証なのか熱証なのかによって、使う漢方薬が違うということです。

花粉症には〇〇が効くという話ではないのです。

そして、さらに重要なことは、漢方薬だけに頼っていては、花粉症を治すことはできないということです。

花粉症だけでなく、アレルギー症状全般に言えることですが、体質を改善しなければ本当の意味で治ったことにはならないのです。

今日は特に、食養生の大切さについてお話ししました。

アレルギー体質には、腸管免疫や腸内細菌の異常が関係しています。

したがって、乳幼児のアトピー性皮膚炎や気管支喘息を漢方薬で治療する際には、腸のはたらきを整えることを最優先します。

そして、実際に腸のはたらきを整えるような漢方薬を処方するだけで、アトピー性皮膚炎も気管支喘息も治ってしまうことが多いのです。

したがって、腸内環境を改善するような食養生を心がけることが、アレルギー体質の改善につながると私は考えています。

基本的には、日本人の体質に合った和食を中心にしながら、動物性よりも植物性の食材を多く取り入れるようにします。

そうすることで、善玉の腸内細菌が増えて、腸管免疫のはたらきも良くなるとイメージしながら実践するといいでしょう。

便通に問題があって、下痢したり、便秘になったりする人は、特にこの点を心がける必要があります。

本日は、そんな話をさせて頂きました。

患者会の楽しいイベント

実は、講習会の前に、楽しいイベントがありました。

講習会の常連が中心になって「患者会」を作っているのですが、会のメンバーが集まって一緒にお昼を食べに行ったのです。

農産物の直売所に併設されている農家レストランで、名前は「さんち家」と言います。

100種類以上の野菜を使った50品目以上の料理をビュッフェ形式で堪能できる、とっても美味しくてヘルシーなお店です。

みんなで一緒に健康的な食事を愉しむことが、何よりの養生になっています。

今日はさらに、食事が終わった後に嬉しいサプライズがありました。

私の還暦をお祝いして、真っ赤なバラの花束と、赤いブリーフをプレゼントしていただきました。

とっても幸せな一日になりました。

第60回漢方未病治療センター講習会」への4件のフィードバック

  1. 山寺夕佳

    喜多先生、早速ホームページを拝見しました!

    えー!先生、3月で還暦を迎えられるのですか?!
    いつも若々しくて、今日久しぶりにお会いしても以前と
    変わらないお姿だったので、とっても驚きました!!

    もしかして3月から先生ご退職され居なくなってしまうのでしょうか???

    すごく心配です。。。
    どうかまだまだ現役でいてくださいますように。。。

    山寺親子
    娘の夕佳より。

    返信
    1. Dr.喜多 投稿作成者

      山寺さん、コメントありがとうございます。
      私は生涯現役を目指していますので、病院の外来もできるだけ長く続けるつもりです。
      ご安心くださいね。

      返信
  2. 亀田 麗

    喜多先生、先日の講習会ではありがとうございました。

    行くまで意味のある記念すべき、60回だとは知りませんでした。
    本当におめでとうございます!
    長い間続いている講習会ですね。

    今回の講習会の内容も、とても興味深くて解かりやすかったです。
    花粉症&アレルギーの話なので、特に興味ありでした。

    漢方薬の話をしていましたが、私の処方されている薬は
    どれにも当てはまらないけど、西洋薬との併用だからか
    個々の体質に合った処方を、先生がしてくれているから
    次回の診察で、簡単に説明してもらおうかな?と思って聞いていました。

    先生は、難しい話をすごく解かりやすく説明してくれるので
    聞いていてすごく楽しく学べます。

    患者対象の話だけではなく、学会とか専門家の方々と
    話す時にでも、きっといつも解かりやすく話して伝えているんだろな~
    と思いました。

    先生は、かなりトーク&講義上手で、個人的にはピカ1だと思っています!
    ・毎回解かりやすく、どんな専門的な内容でも簡単に説明してくれている。
    ・とにかく話が面白いから、更に聞きたいと思う。
    ・板書も、見やすくてポイントが押さえられている。
    等まだまだ沢山ありますが、聴く人の立場になって考えた
    話の内容や仕方なのかなとよく感じます。
    この部分を含め、いつも勉強させてもらっています。

    いつもありがとうございます!

    もうすぐ還暦を迎えられますが、これからも変わらずご活躍下さい☆

    From : REI

    返信
    1. Dr.喜多 投稿作成者

      亀田さん、コメントありがとうございます。

      今回の講習会でお話しした3種類の漢方薬は、花粉症に私がよく使う代表的なものです。
      しかし実際には、他にもたくさん使っている漢方薬があります。

      でも、私たち人間が耳で聞いて直感的に理解できるのは3種類くらいまででしょう。
      それ以上になると、話についていくのが少し難しくなります。

      そこで私は、講習会などで話をする際には、できるだけ3種類に絞って解説するようにしています。
      しかも、お互いの区別が明確なものを選ぶようにしています。

      その上で、それぞれの個性が際立つように話をするわけです。
      そうすると、聞いている人が理解しやすいと感じてくれます。

      亀田さんに処方している花粉症の漢方薬については次回の外来で解りやすく説明しますね。

      返信

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