第3回:漢方の診察は五感を駆使する

投稿者: | 2019年12月30日

2018年5月4日 FB投稿記事

5月15日に出版される『病気はチャンス』第1章の中身を

一昨日から、9回に分けてアップしています。
 
【第3回:漢方の診察は五感を駆使する】
 
「先生は、よく話を聞いてくれるし、

診察もしっかりしてくれるので信頼できる」

患者さんからそのように言われると嬉しいものですが、

漢方的には何も特別な診察をしているわけではありません。
 
ここで、漢方の診察方法について紹介しておきましょう。

漢方医学の診察には、「望診(ぼうしん)」「聞診(ぶんしん)」

「問診(もんしん)」「切診(せっしん)」の4つの方法があり、

それらを合わせて「四診(ししん)」と言います。
 
(1)望診とは、

患者さんの顔色や舌の状態などを、

医者が目で見て観察する方法です。
 
漢方では、

舌の観察を「舌診(ぜっしん)」と呼んで重視しています。

舌の色や形だけでなく、舌の表面についている苔(こけ)や、

舌の裏側の静脈の状態も観察します。

皮膚や爪、髪の毛の観察も重要です。
 
(2)聞診とは、医者が耳と鼻を使って、

患者さんが発する音や匂いを察知する方法です。
 
声に力があるかどうか、

咳をするときにヒューヒューと喘鳴(ぜんめい)があるかどうか、

お腹がゴロゴロ鳴るかどうか、

体臭はあるかどうか、などを察知します。

便や尿の臭いも参考にします。
 
(3)問診とは、患者さんの自覚症状を、

医者が質問することによって引き出す方法です。
 
この質問が上手になれば、

患者さんからうまく情報を引き出すことができます。

漢方では、全身の症状をくまなく質問する必要があるので、

最初に受診する際には、たいてい問診表が用意されています。
 
(4)切診とは、医者が患者さんの脈やお腹、手足を触って、

そこから情報を入手する方法です。
 
漢方では、脈の診察を「脈診(みゃくしん)」、

お腹の診察を「腹診(ふくしん)」と呼んで重視しています。

脈診と腹診については、詳しく話し出すときりがないので、

一つだけ大切なポイントをお伝えします。
 
それは、「脈の力」と「お腹の力」です。

患者さんの脈やお腹を押さえたときに、

跳ね返してくる力が強いか弱いかによって、

身体の状態や体質がわかるのです。
 
このように漢方医学は、心身全体の問題を診断する際に、

患者さん自身の体感覚による自覚症状と、

医者の五感(視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚)による

他覚所見(たかくしょけん)を重視します。
 
検査技術がなかった古い時代に成立した医学なので、

人間の五感を駆使するしかなかったという事情もありますが、

それだけではありません。
 
五感で捉えることのできる情報には、

すべて意味があると漢方では考えているのです。

第1章解説動画

第1章 心身全体の不調は漢方におまかせ
 前編 https://youtu.be/h2YfBcgxJ9I
 中編 https://youtu.be/sXGWNyasLjo
 後編 https://youtu.be/swk-uBETcos

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