2018年5月2日 FB投稿記事

『病気はチャンス』に多くの方が興味をもってくださったので
第1章「心身全体の不調は漢方におまかせ」の中身を
15日の出版に先駆けて、9回に分けて公開させていただきます。
【第1回:なぜいま漢方が注目されているのか?】
身体症状はあるのに、検査結果に異常がない。
いくら検査をしても、症状を説明できるような異常が見つからない。
そのような患者さんが、私の漢方外来には大勢やってきます。
「先生、めまいがしてフラフラするので、
耳鼻科と脳外科で検査をしてもらったのですが、
どこにも異常がないと言われてしまいました。
どうすればいいでしょうか?」
「血液検査では全く異常がないのに、
だるくて家事もできない状態がずっと続いています。
何とかならないでしょうか?」
「食欲がなくてどんどん痩せてきました。
胃カメラでは問題がないのに、
なぜ食べられないのでしょうか?」
現代西洋医学的に説明できない身体症状を訴えて来院する患者さんが、
家庭医や総合診療医の間では大きな問題になっています。
患者さんはもちろん困っているのですが、
実は、医者のほうも困っているのです。
西洋医学は科学の一分野として進歩・発展してきましたが、
その過程で、「主観的な自覚症状」よりも
「客観的な検査結果」を重視するようになりました。
検査結果のほうが「普遍性」が高く、科学的だからです。
普遍性とは、他の人が同じ病気になれば、
その検査結果が同じように出現するということです。
自覚症状は、そうではありません。
同じ病気であったとしても、人によって感じ方や症状が異なります。
このように、普遍性に乏しいことから、
自覚症状は非科学的であるというレッテルを貼られてしまったのです。
その結果、たとえ自覚症状があったとしても、
検査をして異常がなければ「病気ではない」と
みなされるようになってしまいました。
病気でなければ、当然、
治療する必要はないという結論になるわけですが、
患者さんは何とかしてほしいと症状を訴えてやってきます。
だから、家庭医や総合診療医の間では大きな問題になっているのです。
西洋医学が「普遍性」を重視するのに対して、
漢方医学は「個別性」を重視します。
個人差を尊重するオーダーメイドの医学なのです。
病気の個人差を診断する際には、検査データよりもむしろ、
患者さんが訴える自覚症状のほうが役に立ちます。
漢方を専門とする医者が、患者さんの話にじっくり耳を傾けるのは、
それが漢方医学的な診断に必要なことだからです。
逆に、一般の医者が、検査データにばかり注目するのは、
それが西洋医学的な診断に必要なことだからです。
ですから、どちらが良くて、どちらが悪いということではありません。
どちらが優れていて、どちらが劣っているということでもありません。
漢方医学と西洋医学は、
その体系が根本的に異なっているということなのです。
身体症状はあるのに、検査結果に異常がない。
そんな患者さんを診断する際には、
西洋医学よりも漢方医学のほうが適しています。
近年、日本の家庭医や総合診療医の間で、
漢方が注目されるようになってきたのはそのためです。
第1章解説動画
第1章 心身全体の不調は漢方におまかせ
前編 https://youtu.be/h2YfBcgxJ9I
中編 https://youtu.be/sXGWNyasLjo
後編 https://youtu.be/swk-uBETcos