2018年5月8日 FB投稿記事

5月15日に出版される『病気はチャンス』第1章の中身を
9回に分けて順番にアップしています。
残り3回分には、とくに重要な内容が含まれています。
【第7回:漢方でわかってもらえる感動】
「漢方であれば、自分の辛い症状を
わかってもらえるかもしれない」
そんなふうに期待して、漢方の外来を受診する
患者さんが多いということは、逆に、
一般の西洋医学の外来では
「わかってもらえなかった」ということになります。
それは、なぜでしょうか?
その理由は、自覚症状と検査結果の間に
ギャップが存在するからです。
検査結果を重視する西洋医学の場合、
どうしても自覚症状を軽視することになってしまいます。
そのために、患者さんは自分の症状を
「わかってもらえなかった」と感じてしまうのでしょう。
自覚症状がすべて検査結果に反映されていれば、
そんなことはないのでしょうが、
一般の外来で実施できる検査には限界があるので、
自覚症状はあるが検査で異常がないと判定される場合が
少なくないのです。
検査結果には異常がないとわかったとき、
患者さんの家族や友人、職場の上司や仲間は安心して、
ついつい次のような言葉をかけてしまいます。
「異常がなくて良かったね」
「たいしたことなくて良かったね」
このような善意のひと言が、患者さんにとっては、
過酷なひと言になる可能性があります。
「良かったね」と言われても、
辛い症状が消えてしまうわけではないからです。
「それでも症状が辛くて苦しい」
「誰も私の辛さをわかってくれない」
こうして、周囲の誰からも理解されることなく、
たった一人で悩み続けなければならないとしたら、
この患者さんの症状は良くなるでしょうか?
私の漢方外来には、このような経過をたどって、
悪くなってしまった症状を何とかしてほしいと思って
来院する患者さんが後を絶ちません。
「漢方で先生に診てもらってはじめて、
自分のことをわかってもらえた気がします」
涙ぐみながら、そんなふうに言われる患者さんも少なくありません。
漢方は、身体の症状だけでなく、
辛いこと、困っていること、悩んでいることを、
いろんな角度から聞き出します。
それによって、患者さんが抱えている心身全体の問題が
浮き彫りになるからです。
第2章以降で詳しくお話ししますが、
漢方では、患者さんが抱えている心身全体の問題を
「気血水(きけつすい)」の異常として診断します。
患者さんの辛い症状を、気血水が不足している状態や、
気血水の巡りが悪い状態として説明することができるのです。
その説明を聞いた患者さんからは、
こんな言葉が漏れ聞こえてきます。
「私の症状は、気のせいなんかじゃなかったんだ」
「漢方であれば、私の症状をきちんと理解してもらえるんだ」
「検査で異常がなくても、
漢方的には異常として対応してもらえるんだ」
「ようやく、私のことをわかってもらえるお医者さんに出逢えた」
「漢方なら、私の症状がもしかしたら良くなるかもしれない」
患者さんの心の中に、希望の光がかすかに灯った瞬間です。
希望がなければ、治療を続けることはできません。
わずかでも希望があるからこそ、
患者さんは漢方の治療を続けることができるのです。
絶望しかけている患者さんの話に耳を傾けて、
その苦しみに共感しながら、
患者さんのすべてをあるがまま受け入れること。
それが、初診時に私が心がけていることです。
第1章解説動画
第1章 心身全体の不調は漢方におまかせ
前編 https://youtu.be/h2YfBcgxJ9I
中編 https://youtu.be/sXGWNyasLjo
後編 https://youtu.be/swk-uBETcos