2018年5月5日 FB投稿記事

10日後に出版される『病気はチャンス』の第1章の中で、
基本となる考え方を示したのが今回アップする部分です。
【第4回:上工は未病を治す】
ここで、体感覚による自覚症状について、
一つの例をあげながら考えてみたいと思います。
皆さんも、「全体に何となく調子が悪い感じがする」
ということがあるでしょう。
これは、「全体的健康感」に関係する自覚症状です。
全体的に健康状態が良くないときに感じる症状であり、
どこかに何か特別な病気があるわけではありません。
健康ではないが、病気でもない。
あえて言えば、不健康な状態。
そのような状態を、漢方では「未病(みびょう)」と呼んでいます。
漢方的な未病とは、
西洋医学的な検査には異常がないが、
四診において何らかの異常が存在する
不健康な状態であると定義することができます。
二千年以上前の中国漢方の古典にも
「未病」という言葉が出てきます。
未病に対して、すでに病気になってしまった状態を
「已病(いびょう)」と呼んで区別していました。
『黄帝内経(こうていだいけい)』という中国の古典に、
「上工(じょうこう)は未病を治して、已病を治さず」
と書いてあります。
上工の「工」は技術者のことで、
ここで言う上工は「腕の良い優れた医者」
すなわち「名医」のことです。
古典に記されたこの言葉の意味は、
「優れた医者は病気になってからではなく、
病気になる前に治療する」ということなのです。
このように、昔から漢方では
未病の段階で治療を開始することが大切だ
と考えられてきました。
病気になる前の「何となく調子が悪い」という段階で、
それがどういう異常なのかを診断して治療するための
アプローチが体系化されているのです。
具合が悪いのに、検査をしても異常がない人に、
漢方治療をお勧めしているのはこのためです。
ただし、いたずらに漢方治療に頼るのではなく、
生活習慣を見直すなどの「養生(ようじょう)」のほうが
大切であることを最初にお伝えしておきたいと思います。
病気になる前に予防する「養生」については、
江戸時代初期から中期に活躍した儒学者、本草学者の
貝原益軒(かいばらえきけん)が著書『養生訓』の中で、
次のように具体的に述べています。
「養生の道、多くいふ事を用ひず。
只飲食をすくなくし、病をたすくる物をくらはず、
色慾をつつしみ、精気をおしみ、怒哀憂思を過さず。
心を平にして気を和らげ、言をすくなくして無用の事をはぶき、
風寒暑湿の外邪をふせぎ、又、時々身をうごかし、歩行し、
ときならずしてねぶり臥す事なく、食気をめぐらすべし。
是養生の要なり。」
ただし、貝原益軒が養生を勧めているのは、
病気にならないようにすることが最終的な目的ではありません。
病気がなければ人生を快く楽しむことができ、
長生きすれば人生を久しく楽しむことができる。
このように楽しみを失わないことが養生の本当の目的であると、
別のところで述べています。
第1章解説動画
第1章 心身全体の不調は漢方におまかせ
前編 https://youtu.be/h2YfBcgxJ9I
中編 https://youtu.be/sXGWNyasLjo
後編 https://youtu.be/swk-uBETcos