2018年5月4日 FB投稿記事

5月15日に出版される『病気はチャンス』第1章の中身を
一昨日から、9回に分けてアップしています。
【第3回:漢方の診察は五感を駆使する】
「先生は、よく話を聞いてくれるし、
診察もしっかりしてくれるので信頼できる」
患者さんからそのように言われると嬉しいものですが、
漢方的には何も特別な診察をしているわけではありません。
ここで、漢方の診察方法について紹介しておきましょう。
漢方医学の診察には、「望診(ぼうしん)」「聞診(ぶんしん)」
「問診(もんしん)」「切診(せっしん)」の4つの方法があり、
それらを合わせて「四診(ししん)」と言います。
(1)望診とは、
患者さんの顔色や舌の状態などを、
医者が目で見て観察する方法です。
漢方では、
舌の観察を「舌診(ぜっしん)」と呼んで重視しています。
舌の色や形だけでなく、舌の表面についている苔(こけ)や、
舌の裏側の静脈の状態も観察します。
皮膚や爪、髪の毛の観察も重要です。
(2)聞診とは、医者が耳と鼻を使って、
患者さんが発する音や匂いを察知する方法です。
声に力があるかどうか、
咳をするときにヒューヒューと喘鳴(ぜんめい)があるかどうか、
お腹がゴロゴロ鳴るかどうか、
体臭はあるかどうか、などを察知します。
便や尿の臭いも参考にします。
(3)問診とは、患者さんの自覚症状を、
医者が質問することによって引き出す方法です。
この質問が上手になれば、
患者さんからうまく情報を引き出すことができます。
漢方では、全身の症状をくまなく質問する必要があるので、
最初に受診する際には、たいてい問診表が用意されています。
(4)切診とは、医者が患者さんの脈やお腹、手足を触って、
そこから情報を入手する方法です。
漢方では、脈の診察を「脈診(みゃくしん)」、
お腹の診察を「腹診(ふくしん)」と呼んで重視しています。
脈診と腹診については、詳しく話し出すときりがないので、
一つだけ大切なポイントをお伝えします。
それは、「脈の力」と「お腹の力」です。
患者さんの脈やお腹を押さえたときに、
跳ね返してくる力が強いか弱いかによって、
身体の状態や体質がわかるのです。
このように漢方医学は、心身全体の問題を診断する際に、
患者さん自身の体感覚による自覚症状と、
医者の五感(視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚)による
他覚所見(たかくしょけん)を重視します。
検査技術がなかった古い時代に成立した医学なので、
人間の五感を駆使するしかなかったという事情もありますが、
それだけではありません。
五感で捉えることのできる情報には、
すべて意味があると漢方では考えているのです。
第1章解説動画
第1章 心身全体の不調は漢方におまかせ
前編 https://youtu.be/h2YfBcgxJ9I
中編 https://youtu.be/sXGWNyasLjo
後編 https://youtu.be/swk-uBETcos